Between despair and hope
〜絶望と希望の間で〜

ははうえ・・・?
起きてください・・・こんなところで寝たら、風邪を引いてしまう。
ははうえ・・起きて・・・早く帰らないとちちうえが心配する。
ねぇ、お願いだから・・・・。
お願いだから起きてよ・・・。

第六章 心の陰


起キル事ハナイヨ。
なんで・・・だって、ははうえは寝てるだけだ。
起きたらいつもみたいに名前を呼んでくれて、ぎゅって、抱きしめてくれるもん。
ナニヲ言ッテルノ?
起キル事ナンテナインダヨ?
起きるよ!!
ナラ、コレハナニ?
キミノ体ヲ染メテル物ハナニ?
ソノ体ガ冷タイノハ、ナゼ?
っ・・・これは・・・・・
イエナイヨネ?
ダッテキミガ、
言わないでっ!!
・・・・はは・・う・・え・・・・・・・・違う・・違う、そんなこと無いっ!!
寝てるだけだよ、俺を置いていかないもん!
昨日約束したばっかなんだ、『ずっと一緒だよ』って。
ははうえは約束破った事無いもん!!
逃ゲテモ無駄ダヨ。
ダッテ、ボクハキミダカラ。
ダッテ、キミハボクダカラ。
起キル事ナンテ二度トナイヨ。
ダッテキミガ、殺シタンダモノ。
っ・・・・・違う・・・俺はっ!!
俺は殺してなんか・・・っ
チガクナイヨ。
キミガ手ヲ下シタモ同然ダヨ。
ミテ御覧?
キミヲ濡ラシテルノハ、アカイアカイ血液ダ。
っ・・・ぅ、ぁ・・・ぁ・・・・っ、いやだぁーーーー!!!!

無力な自分が許せなかった。
庇われる事しか出来なかった自分が、憎かった。

    *

しばらくは目を閉じたまま上を向き、何も言葉を話さなかった。 その姿を見ていると、暁がゆっくりと顔を前に戻しながら目を開けた。
そして、何かを決心したように、言の葉を紡いでいく。
「我は、自分の母親を殺した。」
そう、静かに、しかしハッキリと言った。
その言葉を聞いて、遙華は驚いたように呆然と暁を見つめる。だが暁はそれを気にした様子も無く、 真っ直ぐと彼女を見据えながら昔話を語りだす。
「我は、自分の母親を殺した。殺したも、同然なんだ。」
「我はまだ幼く、やってはいけないミスをしてしまった。そしてその結果が今だ。」
そこまで言うと少し考えるように俯くと、ゆっくりと話し出した。
「・・・・母上は、人間によって殺された。我を、庇ってな。」
そこまで話すと、話は終ったとでも言うように立ち上がり、部屋を後にした。 1人残された遙華は、無意識のうちにポツリと言葉を溢したまま、その場から動けなかった。
「・・・そう・・・だったんだ・・・」
 ・・・暁が話したのは、きっと全部じゃない。
でもそれは、私だって全部を話したわけではないからかまわないけど・・・。
でもやっぱり・・・ホント今更だけど、聞いてはいけない事だったのかもしれない。
ううん、いけない事だよ・・・。
私だって・・・・・母さんが死んだ時のことなんて、話したくないもん。
・・・・・それに・・私だって・・・暁と、同じようなものだから・・・。
明輔・・・私は一体、どうすればいい?
どうすれば・・・・・・・

    *

「・・・何処だ・・・何処に行ったんだ、遙華・・・っ!」
 そう、あれは確か数日前。
その時に会った時は別におかしなところは無かった。
何処に居たって解る・・・解るはずなのに・・なんで気配が全く無いんだ?
なんで突然消えたんだ?
・・・っ・・・一体何が起こったって言うんだ?!
神だってのに、何でこんなにも無力なんだよっ!
・・・人間は何かあると神に願う。
なら・・・なら一体、俺ら神は一体誰に祈ればいいっていうんだ・・・っ。
どうか・・・どうか無事でいてくれ
遙華!!


先の見えない迷路に閉じ込められて。
気持ちだけが、ただただ先を急ぐ。
ソレガ、己ヲ陥レルト知リナガラ。



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